序章 音について ピアノのつくり チューニングの不思議
音について
倍音
ピアノの音は、多種多彩です。低い音は「ボ〜ン、ボ〜ン」高い音は「ピン、ピン」、もちろん弾き方によっても音色が変わりますね。
音色・音質というのは、とても説明しにくいものです。柔らかい・硬い、明るい・暗い、力強い・柔和な、いろんな表現の方法があります。その決め手となっているもののひとつに「倍音」というものがあります。
例えば440Hzの「ラ」の音の場合、2倍音は880Hzの1オクターブ高い「ラ」の音、3倍音は1320Hzの「ミ」の音、といった具合に、ただ単に440Hzの音(基音)だけが出ているのではなく、倍音と呼ばれる音も混ざった「複合音」として私たちの耳に聴こえて来ます。この倍音構成(倍音の含み方、音量の強弱)により、いろんな音色・音質となるんです。これが、低音、中音、高音それぞれ異なった倍音構成となるために、1台のピアノでもさまざまな音色・音質として私たちの耳に聴こえて来るのです。
例えば、ギターを弾く際に、コマの部分を弾くと「硬い」音になりますが、弦の中央部分を弾くと「柔らかい」音が出ることはご存知かと思います。弾く場所によって、同じギターでも違った音色・音質が出るわけです。また、爪またはピックでの弾き方によっても音が変わるのがわかると思います。
これは、1本の弦を振動させる際に、どこを弾くかによって弦の振動の仕方が違って来るために、音の波形が異なって発音されるためです。
管楽器のフルートなどは、とてもきれいな澄んだ音が出ます。フルートは、もっとも基音が強く出る楽器ですので倍音の音量もごくわずかです。これに対してバイオリンなどはとても複雑な倍音構成を持っています。弓で弦を擦るわけですね。擦る音というのは非常に不快に感じるものです。これをきれいな音として演奏するわけですから、バイオリニストという人たちは、とてもすばらしい技術をお持ちの方々なんです。
ピアノソロ ポルノグラフィティ
音色・音質
ピアノは、弦を「ハンマー」という羊毛を固めたもので叩いて音を出す仕組みになっていますが、弦に対して叩く位置は固定されています。もっとも理想的に音が出る位置になっています。中低音では弦の1/8のところ、高音では1/16のところ、最高音ではなんと1/20のところをハンマーが叩いています。固定されてしまうと、音色・音質を変えようと思ってもそう簡単にはできないですね。せいぜいできても音量調節だけじゃないか、と思うかもしれません。
ところがそうじゃないんです。
そのひとつとして「ソフトペダル」というものがあります、これは、ペダルを踏むことにより物理的動作をさせて、音そのものを変えてしまうことができるというペダルです。(これはグランドピアノだけです。タテ型ピアノは擬似的なものです。)
通常、ピアノには1つの鍵盤に対して3本の弦(ピアノ線)が張ってあります。3本の弦を同時に叩くことにより音量豊かな音が出る仕組みになっていますが、それをハンマーごと少しずらしてやるのがソフトペダルの役目です。こうすることにより、通常3本を叩いていたものが2本になるわけです。すると、3本の時とはまた違った音色・音質になることがわかると思います。確かにグランドピアノの左側のペダルを踏むと、鍵盤ごと右に少し動くことがわかると思います。鍵盤とハンマーアクションは密接な関係を保っているため、ハンマーのみを動かすこはできません。ですから鍵盤も含めて一緒に動く様になっているのです。
このペダルのおかげで、たった一台のピアノでも、色んな表情の音を出すことができるわけです。
もうひとつ、弾き方によっても音を変えることができます。これはなかなか難しい話しになってしまいますが、ピアノは鍵盤を押せば音が出る、というとても簡単な楽器なんですが、実は鍵盤を押すことによって音が出るわけではなく、鍵盤の動き(約10mm)をハンマーの動き(約50mm)に伝え、ハンマーが弦を叩くことにより弦が振動し、その振動をフレーム(ピアノの中の鉄骨)を通じて響板(きょうばん、ピアノの裏面にある共鳴板)が空気を振動させ、音として私たちの耳に聴こえて来るのです。
要は音とは空気の振動、なんです。鍵盤ひとつの動きが空気を振動させている、というわけですね。ですから、より良い音を出すためには弦を振動させてやる、ということ、つまり、鍵盤を押すのではなく動かす、といった方が正解かもしれませんね。そしてその動きの中で、弦にどういった振動をさせてやっているのか、それにより音に表情が産まれて来るわけです。ちょっと難しい話しになってしまいましたね。
一般的に、遠くまで届く音というのが、良い音、という認識があります。ベチャっと潰れてしまって、広がりが無い音、届かない音というのは、聴いていてもあまり心地よいものではありません。そのことを、先ずは気持ちの中で持ちながら鍵盤を叩いてみると、今まで気づかなかった音の変化を発見できるかもしれませんね。
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