不定期なお話し『楽器の王様・・・ピアノ』

序章   音について  ピアノのつくり  チューニングの不思議


ピアノのつくり

木材
 ピアノというと、「木」でできている、という認識があります。確かにそうですね。ピアノの音質を決定づけている要因のひとつとして「木」は大変重要な役割を果たしています。
 木材というのは、通常の場合乾燥したものを使用します。家に使う木材もそうですし、家具に使う木材もそうです。特に構造材として使用する場合はしっかりと乾燥した木材を使うことになります。乾燥させる過程として、まず水につけて油脂成分を抜き、そして乾燥させる、ということになります。むかし、公園のベンチ(木製)に座ろうと思ったらヤニだらけだった。。。そんな記憶はありませんか?木材の中に油脂成分が残っているため、日に照らされて乾燥する際にヤニがジワ〜っと染み出て来た、というわけです。
 さて、ピアノに使用されている主な木材の種類としては、楓(かえで)、松(スプルース)が代表的です。松と言えば松ヤニ!そうそう。油脂成分が多量にありますね。生の木そのままではとてもピアノには使用できません。ピアノだけに限りませんね。他の木材を使用している楽器、家、家具なんかも同じです。
 通常の場合、生の木は50〜70%またはそれ以上の樹液、水分を含んでいます。まずこれを乾燥させないといけません。製材と言って、テキトウな大きさ、厚さに切り出し、空間を設けて積み重ね、空気の通りを良くすることにより少しずつ乾燥して行きます。木材は外部から乾燥して行きますので、外部は乾燥していても内部はまだ生のままだったりします。そして、寒暖、晴雨に繰り返し会うことによって「季枯らし」された状態となります。少しずつ安定方向に向かうわけですね。これには数年かかると言われています。
 やっと乾燥できた!と思っても、まだまだです。天然乾燥だけでは木材の含水率を20%を前後まで落とすことはなかなか難しいものです。実際に使っているピアノの木材の含水率は20〜25%なので、これで良いのでは、と思うのですが、これではまだまだ木材が不安定なのです。そこでどうするか、というと「人工的に乾燥させる」のです。乾いた熱風を当てたり水蒸気をあてたりして急激に乾かない様にしながら乾かして行くんです。最終的に含水率を4〜10%まで落とすのです。カリカリに乾いた状態です。すごい技術ですね。その上で、また含水率が少し戻って20〜25%程度で安定する、というワケです。
 こうして理想的に乾燥した木材を使用することによって、長期間経っても狂いの少ないピアノが完成するわけです。ピアノの中身のアクションの部品などは100分の5ミリ単位の精度が要求されますので、こうした高い乾燥技術が必要になるわけです。

ピアノソロ YOSHIKI/Eternal Melody 2

グランドピアノの曲面
 グランドピアノ。。。曲がってますね。あの、ごっつい木材がきれいに曲がってますし、それが「元に戻る」なんてことはありません。どうなってるんでしょう・・・
 ピアノの外装部分のほとんどは「合板(ごうはん)」でできています。合板を曲げて作っているのではなく、曲がった合板を作るのです。大きな丸太を煮沸し(想像できませんね)柔らかくしておいて、「丸剥き」と言って大根の桂剥きみたいに薄くきれいに剥いていくんです。その薄い1枚1枚のことを通常「ベニヤ板」と呼んでいます。そのベニヤ板を曲げた状態で貼り合わせるわけです。なので、元に戻ったりすることはありません。これがグランドピアノの曲がった形なんですね。すごいですね。


鉄骨(フレーム)
 ピアノの構造体としてもうひとつ重要なものが鉄骨(フレーム)です。フレームは数10トンもの力に耐えるだけの強度があります。ピアノの弦は1本あたり70KG〜90KGの力で張られています。ピアノ1台で約230〜250本ものピアノ線が張ってありますので、計算すると。。。え〜っと。。。すごいですね。もしかして、私たちが寝ている時も、食事をしている時も、いつもずっとこの力に耐えているわけです。エラい!!ですので、フレームというのは、とてつもなく大きな強度が要求されるんです。
 たま〜に、とても古くて、弦のサビたピアノなどを調律していると、突然耳もとで「バ〜ン!」という大きな音をたてて弦が切れることがあります。やってるこっちもびっくりして、しばしぼーぜんとするのですが、100キロ近い力で張られているそのエネルギーがいきなりプツンと行くわけですから、それはそれはびっくりします。お客様に「すみません〜ん」と謝りながら、それでも部品代は頂戴しないといけないのでとても申し訳なく思うのですが、調律は続けないといけないし、かといって次の弦を締めたり緩めたりしていると「また切れるかな?」という恐怖に襲われて、一瞬続けるのを躊躇したりします。
 話しがそれてしまいましたが、フレームは鋳造といって、熱〜くして溶けた金属(湯)を型に流し込み、冷まして作ります。冷えて固まった鋳物は、何も加工しない時が最も強度があります。ですので、ピアノのフレームは、そのほとんどが「湯」が「冷めた」状態のままです。難しいのは、「熱い状態」と「冷めた状態」では、物質そのものの大きさが異なる、ということです。冷却するにつれて収縮して行くのです。ですので、鋳物の「型」は、原寸通りには作ることはできません。流し込む物質によって収縮率を計算し、少し大き目な型を作り、そこに流し込むんです。すると、冷めた時にウマい具合いにちょうど良い大きさになるんです。


 木材の知識と金属、樹脂など、あらゆる物質の特性を理解して作られているからこそ、私たちはゆっくりとピアノを楽しむことができるんですね。

次回は。。。どうしよう。。。ピアノ線のお話しでも。。。

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