序章 音について ピアノのつくり チューニングの不思議
ピアノ線のことを書こうかと思っていましたが、突然表題のとおり「チューニングの不思議」について少し・・・
チューニングの不思議
チューニング(調律)
さまざまな場面で使われる「チューニング」という言葉。音楽では主に「楽器の持つ音を整える」意味で使われます。もっとも、楽器によりチューニングできる範囲には限りがありますので、全ての楽器が自由にチューニングできる、ということではありません。
さて、ピアノのチューニング、耳慣れた言葉で「調律」と言いますが、これがとっても不思議なんです。
何が不思議かと言うと・・・その前に音階のお話しを・・・
音階
ドレミファソ・・・という音階があります。ドとレの間には半音(ピアノでは黒鍵)があって、ドとレは全音の関係にあります。ドから始まってその上のドまで行く間に11コの音があります。つまり1オクターブは12コの音階でできているんです。ピアノを調律する時は1オクターブを12コにきちんと分けて合わせて行きます。
ギターの場合は、6本の弦をそれぞれ合わせるだけで、あとはフレットという仕組みが音を半音ずつ分けてくれます。出てくる音はピアノと同じ音階になります。
さて、ヴァイオリンはどうでしょう。ヴァイオリンには「鍵盤」と同等な機能を持つ仕組みがありません。見たことのある人はわかると思いますが、ヴァイオリンのネックにはギターの様なフレットがありません。どういうことか、というと、楽器側では1オクターブを12コに分けていないんです。ウ〜ム、なんだかわからなくなって来たゾ。。。どうやって12コの音を出すのか、というと、「指」の「感覚」と「耳」なんですね。指の感覚というよりは間隔かもしれません。「ここを押さえたらこの音がでる」というのを感覚的に身体が覚えているのですが、逆に中途半端なところを押さえると12コの音にはまらなくなります。ドでもない、レでもない、何とも聞いたことのない音になります。ヴァイオリンで指をスライドさせながら音を出すとアナログ的に音の高さが変わるのがわかります。
ノート型五線譜(Moleskine Music Notebook)
平均率
さて、1オクターブに12コの音がありますが、1オクターブとは、音の振動数で言うとちょうど倍・半分の差になります。440Hzの音の1オクターブ上は880Hz、1オクターブ下は220Hzです。現在のピアノの調律は1オクターブを12コに均等に割り振る「平均率」という方法により行われています。例えば440Hzと880Hzでは、その差の440を12で割った・・・いえいえ、そうは行きません。振動数というのは倍半分の世界です。で、どうするか、というと、440に12乗根ルート2をかけてやるのです。???ですね。12回かけると2倍になる、という計算式です。これが現在よく耳にする音楽のチューニングの原点となります。それが平均率です。
ピアノの調律と平均率
ピアノの音は、鍵盤のちょうど真ん中(おへそのラの音)から上へ1オクターブ上がったラの音が440Hz〜442Hzあたりで調律します。その1オクターブ上のラの音は平均率の計算式にあてはめると880×2=1760Hzとなります。でも、実際ピアノから出てくる音は1760Hzではありません。1760Hzよりも少し振動数が多くなります。その上の3520Hzあたりになるともっと多くなります。これは、ピアノ線の持つ剛性・支点などの影響で、振動している弦から出る倍音が整数倍よりも少し高くなるために起こる現象です。これを、インハーモニシティといいます。
実際に音を聞いてみると・・・わかりません。ハーモニーも特に問題なく聴こえます。実際のズレは最高音のドの音で半音の約40%前後までズレるのですが、聴いている限りではそのズレは問題にならないぐらいピアノ全体がまとまって聞こえます。とっても不思議な現象です。これは、ヴァイオリンやギターなどの楽器には見られません。ピアノ線の、あの、強力な張力とピアノの構造が生み出す現象です。
例えば、機械などを使い平均率の計算式でキチンと整数倍に音を合わせたりするとどうなるんでしょう。高音が上がりきらずに重苦しい仕上がりになってしまいます。ピアノが死んだ状態になってしまいます。
でも、調律師の人は、それを意識しながら高く合わせているわけではありません。これはピアノの持つ特性なんです。ですので、最適な音が出る様に耳で聴きながら調律を行うと、結果的に数値で計測した場合に振動数が多くなっている、というわけです。
ちょっと難しい内容になってしまいましたので、次回もうちょっとラクに。。。
序章 音について ピアノのつくり チューニングの不思議